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-バックナンバー- 20006年12月号
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フェアリーインタビュー

12月12日まで公演中、2006年の掉尾を飾る宝塚大劇場宙組公演は、幕末青春グラフィティー『維新回天・竜馬伝!』−硬派・坂本竜馬V−と、ショパンの名曲を中心にくりひろげるグランド・レヴュー『ザ・クラシック』−ILOVECHOPIN−の2本立て。圧倒的な美貌と確かな実力でファンに夢を与え続けた貴城けいが、宝塚男役の集大成を見せている。


2006年の宝塚大劇場の掉尾を飾る宙組公演『維新回天・竜馬伝!』『ザ・クラシック』で、トップお披露目を迎えた貴城けいさん。宙組3代目のトップスターだ。初舞台以来、ずっと雪組で活躍してきた貴城けいさんが、宙組トップに決まったときは驚いた。もちろん、同じ宝塚歌劇団の中でのことだし、昨今では組替えは少しも珍しくないが、それでもいきなり主演男役としての移籍は聞いたことがない。宙組へは特別出演もしていないから、ご本人の気持ちを、あれこれ勝手に想像して、こちらの方が緊張する有様だった。

でも考えてみると、4組からの選抜メンバーで発足した宙組には、初めての出会いを強烈なエネルギーに変える豊かな風土があるのだ。意表をつく3代目就任だったが、その分、貴城けいさん率いる宙組公演への期待がグッと大きく膨らんだのも事実である。

移籍直後の、8月の博多座公演『コパカバーナ』は、貴城けいさんの新局面が爆発するように弾け出た、エキサイティングでパワフルな、すばらしい舞台だった。

「宙組への組替えは自分の中でも一大ニュースでした。驚きが頭を占めていて、坂本竜馬をどう演じるかについて考えたのは、公演のお稽古が始まる頃でしたね。竜馬にはみなさん、いろんなイメージをお持ちだと思いますが、私は特に竜馬の優しい面を随所に出していきたいと思っています。竜馬は優しい中に強さ、行動力、説得力があり、竜馬が言うんだからしかたないかなと相手が頷いてしまうような人間的魅力のある人。作・演出の石田先生が求めていらっしゃる竜馬像を、来年の東京公演千秋楽まで追究したいと思います」

『維新回天・竜馬伝!』は1989年に宝塚バウホールで、そして1996年に花組の真矢みき主演で上演されたシアター・ドラマシティ公演『硬派・坂本竜馬!』を、宝塚大劇場用にリメイクした幕末青春グラフィティーだ。

洋物のイメージが強い貴城けいさんだが、雪組では数々の日本物を経験している。新人公演の主役では『春櫻賦』『浅茅が宿』、バウホール初主演の『ささら笹舟』では 悲運の武将・明智光秀を演じた。初舞台も『この恋は雲の涯まで』。その他の本公演にも『忠臣蔵』『雪之丞変化』『あかねさす紫の花』『春麗の淡き光に』などがあり、月組に特別出演した『飛鳥夕映え』を含め、宝塚歌劇を代表する日本物をたくさん経験ずみなのだ。

「竜馬は時代劇の主役といっても、今まで経験してきた日本物とは違って、お衣装こそ袴をつけていますが、自由に舞台の上を走り回っている感じなので、全く新しいタイプの人物ですね」
もちろん基本的な日本物の所作があって、ニュー竜馬像をゼロから創り上げることができるのである


「竜馬は誰も思いつかなかった新しいことを考えた人。日本物の日本人でも洋物の西洋人でもなく、西洋かぶれをした日本人に見せたい。これまでの舞台で培ってきたことを、どれだけ竜馬に反映できるかということに尽きます。大らかさや包容力を具体的にどのように出そうかということよりも、まず気持ちをゆったりともって集中したいと思います」

最大の見せ場については、「やはり薩長同盟を結ばせるために薩摩の西郷隆盛と長州の桂小五郎に思いをぶつけて説得するところは重要な場面です。薩長同盟があるから今も竜馬の名前が残っているのだと思いますね。もちろん、それだけではありませんが、将軍でもなんでもない、土佐の下級武士の竜馬が、日本の歴史を変えた出来事ですから」

心を揺さぶる痛快娯楽時代劇『維新回天・竜馬伝!』のあとは、草野旦作・演出のグランド・レヴュー『ザ・クラシック』−I LOVE CHOPIN−で貴城けいさんのダンスがたっぷりと観られる。


たかしろけい・1992年『この恋は雲の涯まで』で初舞台、翌年雪組に配属。97年『仮面のロマネスク』で新人公演初主演。2000年『ささら笹舟』でバウホール公演初主演。06年5月宙組に組替え、博多座公演『コパカバーナ』より主演男役に。
東京都出身/愛称・かしげ、かし


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