世界漫画大賞を宝塚に!
五月七日付けの読売新聞で、麻生外務大臣の発案による、国際的な漫画賞の創設が発表された。自他共に認める「漫画ファン」の外相らしいアイデアだが、世間の反応はいまひとつだったようだ。ところがこれに飛びついた人がいた。文化行政の充実による都市再生を謳う、阪上善秀市長である。
- 市長
- もう、すぐに「これや」と思いました。大急ぎで要望書作って、麻生外務大臣のところへ飛んで行って聞きました。「どこか他の自治体で手を挙げてるとこありませんか」言うて。そしたら、まだです、やりたいと来られたのは宝塚市が初めてです、ゆうことで、それなら、是非、是非、宝塚でやらして欲しい、そう言って要望書渡してきました。
世界中の漫画とかアニメに興味ある人で手塚治虫先生の名前知らない人はいないでしょ。宝塚でやらないでどこでやるのか、の思いで。
もう予算もついて、授賞式も東京でやることになってるのを、何とかそれ(授賞式)だけでもこっちでやってもらえませんか、て言っているとこです。
麻生大臣は、なんせ、外務政務次官の時分に、鉄腕アトムに国民栄誉賞贈ろうと運動されたくらいで、まあ、ロボットやからあかんかった、言うて笑てはったけど、本当に漫画という文化を愛しておられる人やから、何とかなりそうな予感は多いにあります。
女性のための甲子園!
「春の甲子園」「夏の甲子園」が全国の野球少年の目標になっているように、TAKARAZUKAを芸術やスポーツなどのコンペタティヴな文化活動に携わる女性のための甲子園にしようというのだ。
- 市長
- ただの思いつきではない。成算もあります。
他所に無い、宝塚だけの特色である、歌劇と手塚治虫記念館。そこから生まれる、「たからづか」という言葉から生まれるイメージ。
このイメージに相応しいコンテストやイベントを、既に宝塚に定着している、音楽回廊や宝塚映画祭などの文化行事に重ねあわせることで、更にしっかりした、活力に満ちた、文化都市宝塚が生まれると思います。
もちろんそれにはお金もかかる。しかし、ここで「予算がない」、言うたら終りです。金が無いから縮小する、取りやめる言うてたら、それこそお役所仕事。いつまでたっても文化なんか生まれません。でも金が無いのは事実。では、どうするか。
金が無いなら知恵を絞ればええんです。たとえば、冠をつける。文化事業にご理解のある企業にお願いしてスポンサーになっていただく。
「予算が無い」言われた時に、私はいつも言うんです。「足らざるは金やない、知恵や」と。
実際にもう動いてます。第一弾として、十一月十一日、音楽回廊にあわせて、民間団体がバウホールで「宝塚エンターテインメントフェスティバル」をされる予定で、市としてもバックアップします。その事業にご理解ある企業各社に協力、協賛いただくことも既に決まっております。
花火大会もそうです。六十数軒旅館のあった時代と、ホテル三軒しかない今と、おんなじようには出来ないのが当たり前です。でもそこで縮小や廃止やと蒸し返すんではラチが明かんでしょ。宝塚の花火大会に積極的に意義を見出してくれはる企業に冠になっていただけないかお願いしていこうと思っています。
街づくりと都市再生
宝塚市が、産、官、学、民、四者一体となっての街づくりを訴え始めて、もう随分になる。しかしながら、その実があがったとは、寡聞にして聞かない。聞くのは、街づくりの一環と称して学生サークルが行う一過性のイベントに「官」が予算をつけた、という話だけで、そこには「産」の協力も「民」の参加も殆ど見えてこない。そもそも、「学」とは学生ではなく、学問の府、研究機関としての大学の意味であるはずなのに、これはどうしたことなのか。
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市長
- これも結局、「発想の転換を」、「足らざるは金やない、知恵」である、と。
「産」が是非協力したい、と思うような企画、「民」の埋もれた人材が何としてでも参加したくなる企画を考えることです。いくら「官」で箱つくっても、産、民の積極的な協力、参加がなかったら文化なんか生まれてきません。さらに「学」です。確かに今のままでなく、もっと重い立場で参加してもらいたいと思います。
具体的には、サンビオラなんかの空きスペースを活用して、市民講座を常設していただくとか、今現在お願いしてるのは、甲子園大学、宝塚造形芸術大学、関西学院大学の三校ですが、この三校以外の大学でも、宝塚を良くしよう、良くできるという想い、意欲のある学校にはどんどん参加していただける形にする、つまり、「学」のバリアフリー化することなんかを考えてます。
音楽学校の跡地利用については、「学」よりも「産」ですが、あそこは博物館、兼、イベントホールみたいな形で運営するのが望ましいのでしょうが、そのためには、歌劇団、阪急さんのご協力が必要だと思います。常設展示の充実は、博物館として当然ですが、それ以外に、卒業生の方々によるリサイタルやレッスン教室も常設的に開催したい。出来れば、バスで観劇に来られたお客さんに、大劇場への前か後に、ここでワンストップしてもらえるような、価値のある場所にしたいし、そのためにも、歌劇団、阪急側とはもっと密接に、言いたいことが遠慮なくお互いに言い合えるお付き合いをしていくことが大切だと思ってます。
世界へ向けての文化発信
現在、宝塚の姉妹都市は、オーガスタとウイーンの二つだけだ。いずれとの交流も市民レベルで積極的に認知されているとは言いがたい。国際文化都市、宝塚の未来について市長はこう語る。
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市長
- 国際的な案件であれ、国内の地方都市の案件であれ、文化行政というのは、産、学、官、民、の四者一体となってはじめて実があるものになります。姉妹都市もいっしょで、四者の交流があって初めて、ホンマの兄弟姉妹の関係になる。そう考えたら、やっぱり、現状のままではいけないでしょうね。姉妹都市となった時代背景やその時々の事情はあるとしても、今のこの時代に、ヨーロッパとアメリカだけで、一番近いアジア諸国に姉妹都市が無いのはたしかに不自然ですしね。
さっき話の出た「漫画大賞」しかりです。手塚治虫先生の名前はワールドワイド、世界で通用する。歌劇もそうでしょ。西欧だけやない、世界に向けて発信できるTAKARAZUKAがここにはあるんです。
そういうことも含めて、国際関係の動きにも素早く対処するために、来年度からは国際政策的な室を立ち上げたいと考えています。
誕生百周年を控え益々盛んな歌劇に負けないように、宝塚市も歌劇の創業者、小林一三先生のように、創意工夫を凝らし、「足らざるは金やない、知恵や!」を合言葉に頑張っていきたいと思っております。