日本の歴史が生まれ、育ち、開いたところ、奈良。その地に生まれ育った井ノ上博之さんが15年の歳月をかけて撮り続けたふる里の風景と祭り。日本武尊が大和を望郷して詠んだといわれる「倭は国のまほろば たたなづく青垣 山籠れる 倭しうるはし」のごとく、悠久の美をたたえる風景と信仰が息づく神仏の祭りを井ノ上さん独自のカメラアイで捉えた美しい写真集が出版された。
飛火野の神秘的な夜明け。「悠久の原風景」の表紙は黒地に鹿のシルエットが美しく浮かび上がる。期待感を高めて表紙を開くと、四季に彩られた奈良の風景が広がる。山々に囲まれた自然、そしていにしえの都、藤原京、平城京をしのばせる歴史、それらは井ノ上さんのメッセージとして見るものに語りかける。
井ノ上さんは退職後、中学時代から好きだった写真でふる里奈良を撮ってみたい、と17年前創設された朝日カルチャーセンター奈良に入会、本格的に写真を始めた。撮りためた奈良の風景は3000点。雪の日も炎天下も雨の日も被写体を求めて何度となく足を運んだ思い入れのある写真ばかりだ。15年を区切りに写真集作ろうと決め、167点に絞り込んだ。「それぞれに思い入れがあって悩みました。15年間指導いただいている写真教室の矢野先生のアドバイスでなんとか絞り込むことができました」
写真キャプションの英訳に加え、巻末には几帳面な井ノ上さんらしくフィルムやレンズの種類を記録した撮影データが正確に掲載され写真仲間には好評。
2集「神々の祭り」も奈良に住む井ノ上さんならではの貴重な写真集。二月堂のお水取りや若草山山焼きなどの他に、あまり知られていないが連綿とその地に受け継がれている貴重な祭りが全部で60紹介され、井ノ上さんが図書館に通って調べたという祭りのあらましも掲載されているので興味がより深まる。「祭りは土地の歴史であり文化。そして日本人の心のふる里ですから、大切にしたい。大和にはまだ数多くの祭りが受け継がれています」。ライフワークとして祭りの撮影はまだ続く。
この写真集はあさひ高速印刷(株)から出版され、従来に比べより写真品質に近い画質が再現される新技術、高精細印刷(スブリマ)により、細かい線やディテールが美しく仕上がっている。
写真集の出版を記念して展覧会が7月に奈良で開催され、8月には大阪でも開催、会場で写真集も販売される。
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紀伊屋國書店川西店で発売中 |
大和し麗し悠久の原風景・大和し麗し神々の祭り
2005年8月21日発行 |
著者 |
井ノ上博之 |
監修 |
矢野建彦 |
英訳 |
井ノ上博文 |
発行所 |
あさひ高速印刷(株)出版部 |
印刷・製本 |
あさひ高速印刷(株) |
上製本・240mm×250mm
168頁(悠久の原風景)
160頁(神々の祭り)
定価 各3,800円 |
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井ノ上博之(イノウエヒロシ)
プロフィール |
1932年奈良橿原市生まれ。薬品関係の会社を退職後、89年に朝日カルチャーセンター奈良に入会。'03奈良県展、県市長会賞など受賞多数。現在、なら社保センター写真講座講師を務める。 |
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大阪展 富士フォトギャラリー大阪
8月25日(木)〜8月31日(水)
AM10:00〜PM6:00
大阪市北区中之島2―3―18新朝日ビルB1F |
写真集のお申し込みは、
当社出版部 06―6448―7521
(担当・寺口) |
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