光の玉を抱えているような輝きが、遠野あすかさんの全身に溢れている。
「こんな遠野あすかはまだ観たことがないと、お客様に感じていただけるような役にできればと」
宝塚大劇場で12月13日まで上演中の花組公演『落陽のパレルモ』で遠野あすかさんが演じているのは、ジュディッタ・フェリというユダヤ人の女性だ。
「私はこれまで、どちらかというと自分を押し出す役の方が多かったのですが、今回は生まれに引け目を感じている受身の役を、地味になってしまわないように心がけながら演じています。今までにない新しい遠野を見ていただければうれしいです」
お稽古は、日生劇場公演『Ernest in Love』が千秋楽を迎えた直後の9月25日から始まった。このオスカー・ワイルド原作の喜劇で遠野あすかさんが演じたのがヒロインのグウェンドレン。”殿方の興味を惹くような帽子!”と歌い上げる明朗な女性だ。恋にまっすぐで、実にチャーミングなグウェンドレンを、
「すごく楽しませていただきました。実はアドリブのないコメディで1ヶ月間、舞台に立つのは辛いかなと思っていたのですが、リピーターのお客様にも毎日、笑っていただけたんですね。やはり成長するには厳しいことを体験するのが必要だと思いますが、私は楽しい舞台で幸せを感じると成長するみたいなんです。『Ernest in Love』では朝、楽屋に行く途中でもう、舞台に立てることがうれしくて涙が出たり、1回公演日には2回公演だったらいいのにと思ったりする位、とにかく楽しくて幸せで。それで何が変わるのかというと、よくわからないのですが、自分自身の中が今とても充実している感じなんです。新人公演を卒業させていただきましたので、大劇場公演に集中して、お客様に楽しんでいただける舞台をしっかりつとめたいと思っています」
1998年、『シトラスの風』で初舞台を踏んだ遠野あすかさんは抜擢も早く、新人公演のヒロインを5回、経験している。最初は2000年、宙組公演『砂漠の黒薔薇』。それから02年、花組での2作目である『琥珀色の雨にぬれて』、そして『エリザベート』。以後も03年『野風の笛』、04年『La Esperanza』と続いた。また、日生劇場で初めて宝塚歌劇が公演した『風と共に去りぬ』でスカーレットIIの役を演じた。
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