宝塚市に住む水墨画家、武田一華さんが父、武田義明さんの生き方を見つめ、子々孫々まで伝えようと親族に寄稿を呼びかけまとめあげた本が「架け橋」として出版された。
タイトル「架け橋」にふさわしい表紙絵は武田義明さんの三女、一華さんの作。土木建設技師として橋の設計に長く携わった義明さんが構想を練り、基礎調査に尽力したという「瀬戸内しまなみ海道」四国架橋が描かれている。清廉潔白で堅実に生きた義明さんの生き方が墨一色の表紙からも伝わってくるようだ。
子ども、6人が両親の思い出をつづり、母、三重子さんの末妹や甥、姪、そして孫ら9人が寄稿、残された義明さん本人の随想と戦時中の軍事郵便など貴重な文章が綴られている。随想「一夜城」は昭和19年、トラック島に海軍飛行場建設の命を受けた義明さんが一夜にして計画を練り、50日余りで完成させた逸話。一技師が成し遂げた偉業として今も語り伝えられているという。また、義明さんは親族の繋がりを大切にし親睦旅行を企画、「信玄会」と名づけ、亡くなるまで25年つづけられた。「信玄会」の記念写真や両親の在りし日の姿を偲ぶ写真もふんだんに使われ、明治・大正・昭和・平成を生き抜き、多くの人を愛し、愛された武田義明・三重子夫妻の一生が浮かび上がってくる。同居していた一華さんがまえがきにも書いているように「父が米寿を迎えたとき、わしは友人の追悼文を書いてきたが、自分には誰も書いてくれるものもいなくなった、と淋しそうに漏らした呟きが本を作るきっかけ」となり親戚の協力を得て父・義明さんの生きた証を残すという思いが実現した。義明さんを知る人の傍らで、この本は先人の歴史を語り、生き方を標す一冊となることだろう。
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「架け橋」
平成17年8月27日 |
発行
編
集 |
信玄会
ウィズたからづか編集部 |
印刷 |
あさひ高速印刷(株) |
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