バックナンバーへ|TOP
-バックナンバー- 2004年9月号

元X JAPANのYOSHIKI氏が切なくて甘いバラードの新曲を提供しているのも話題だ。
「すごくきれいな曲。初めて聞いた瞬間、感動で涙ぐんでしまいました。」

『あさきゆめみし』の刻の霊や、『エリザベート』のトート、そして『不滅の棘』の不老不死の青年エロールなど、春野寿美礼さんが放つ魅力の一つに、人間を超えた妖しさがある。一方で『野風の笛』の花井主水正義雄のような誠実さも、大きなチャームポイントだ。

そんな春野寿美礼さんが、『LaラEsperanza』では、挫折したタンゴダンサーのカルロスが、現実をありのままに受け入れて生きていく様を演じている。

「どこかに自分の世界がみつかることだけを信じて生きている、という歌詞があるのですが、カルロスは一つの目的に執着するのではなく、自分の思っていることがいつか人生で叶うだろう、と漠然と信じているような人。作・演出の正塚先生が私の性格を見ぬいて書かれたと思うので、あえて役作りを工夫しないように、感じたことを自然に表現するようにしています。台本をもらって1晩考えて、こうつくりました、というのはダメなんですよ。それをすると私ではなくなってしまうし、カルロスでもなくなってしまうんですよね」

演技者を熟知している座付作者による、オリジナル作品の醍醐味が、満喫できる舞台なのだ。

春野寿美礼さん演じるカルロスと、娘役トップのふづき美世さんが演じる画家志望の娘ミルバには、野生のペンギンを見たいという共通の夢があり、お互いのコンテストやコンクールが終了後に長距離バスターミナルで会おうと約束するが、事態は一変する。「カルロスもミルバも、飼われているペンギンではなくて、厳しい環境の中で自力でどうにかして生きていこうとしている野性のペンギンが見たい。その姿に自分たちを重ねているのです。私は新しい作品をいただいたときはいつも、初心に戻って1から創り直すという感覚で臨んでいるのですが、今回の舞台は宙組の水夏希と月組の霧矢大夢が特別出演して新しい風を花組に吹き込んでくれているので、さらに新鮮な気持ちで取り組んでいます」

水夏希は1997年から2000年まで、霧矢大夢は95年から97年まで、花組に所属していた元花組生である。
「二人とも自立しているし、自分がもっているものを表現する力をしっかりとつけていて頼もしいですよ。もちろん花組の下級生もみんながんばっています」

言うまでもなく、美の表現にしのぎを削っているのが宝塚スターであり、トップスターは美しさの頂点に立つ人たちだ。春野寿美礼さんの美のこだわりについてお聞きすると、
「外見的には、特にスーツ物と黒エンビは後ろ姿に気を配ります。シルエットを美しく、着こなしをしっかりと、ですね。精神的には、男役は一言でいうと包容力なんですよ。すべてを包み込み、受け入れられる大きさを出したいと思っています。それが男役の美しさであり、理想ですね」

ならば、これからやってみたい役は?
「軍服が好きなんです。いつか、軍服を着て、恋に悩むような物語をさせていただきたいな」
 ものすごくストレートな言葉が、一陣の風のように流れてきた。

※次号のフェアリーインタビューは、花組の愛音羽麗さんの予定です。



-バックナンバー一覧-

インタビュアー  名取千里(なとり ちさと)  
 (ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局 /宝塚NPOセンター理事  

主な編著書   
「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)   
「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)  
 「仕事も!結婚も!」(恒友出版)