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-バックナンバー- 2004年8月号

芝居はキャッチボールと同じなので、受ける相手が変われば、投げ方も変わる。彩輝直さん扮する蘇我入鹿が、三人の役替わりで、どの様に微妙な変化を見せるか、とても興味が湧いてくる。

彩輝直さんが新人公演で大役を得たのは早く、初舞台の翌年、配属された月組の東京公演『ベルサイユのばら』新人公演第1部でアンドレ役に大抜擢された。花組から移籍してきたばかりの汐風幸が扮する主役オスカルを相手に、当時、研2だった彩輝直さんはブーツもサーベルもマントも初体験だったが必死でがんばった。その後、2001年に『ベルサイユのばら2001』として再々演された時、専科生になっていた彩輝直さんは宙組公演でオスカルとアンドレを水夏希と競演し、「お客様のイメージにお応えできるようなオスカルでありアンドレでありたい」と丁寧な役づくりをしていたのが印象的だった。

92年、『PUCK』の新人公演では本役の汐風幸が生き生きと演じたコミカルな女の子ヘレン役に挑戦し、94年、初めてホームシックにかかったというロンドン公演に参加した。93年『ミー&マイガール』新人公演の第2部でジョン卿を演じ、96年に星組へ移籍。『二人だけが悪』で新人公演に初主演すると、97年『エリザベート』新人公演でも主役トートを演じ、98年『夜明けの天使たち』で宝塚バウホール初主演を果たした。99年『WESTSIDESTORY』で大役ベルナルドを演じきったあと「舞台人としての壁に挑む気持ちはいつも同じだった。自分がやってきたことに自信をもち、もう一段、強くなれた」と話してくれた。

博多座『我が愛は山の彼方に』のチャムガ、バウホール『エピファニー』『聖者の横顔』の主演を経て、2000年専科に移籍。この時までに涼風真世、天海祐希、稔幸のトップ披露公演に出演しており、専科生として特別出演した宙組1000DAYS劇場『望郷は海を越えて』『ミレニアム・チャレンジャー』で和央ようか、星組東京宝塚劇場『花の業平』『サザンクロス・レビューU』で香寿たつきのトップ披露にも立ち合った。新生の意味深い特別な披露公演に縁がありますね、と言うと、「途中参加を含めると、確かにそうかもしれませんが、学年的には、皆さん、同じくらい関わってきているはずなんです」

02年には彩輝直さんにとって二度目の海外公演となる第2回中国ツアーに参加し、主要メンバーの立場で大成功に導いた。03年4月、下級生時代を過ごした月組に出演。10月、専科から月組に移籍。11月、紫吹淳サヨナラ公演『薔薇の封印』のヴァンパイア役により、トート以来の妖しい美しさでファンを魅了。そして04年4月、インドネシア独立をテーマにした菊田一夫の名作『ジャワの踊り子』で全国ツアーを行い、これが新トップとしての初仕事だった。彩輝直さんとしては6年ぶりの全国ツアーだったが「舞台づくりへの思いが一つにまとまった作品。下級生も多く、少しでも成長したい、変化していきたいという気持ちがみんな強いことを実感し、宝塚のすばらしさを改めて強く感じました」という充実したスタートになった。
 大劇場での今回のショーは出演者のほとんどが妖精という設定。「男役の魂をストレートに出す場面や、コミカルな場面など様々で、毎日楽しみです」

男役の中でも独特の色気を表現できる貴重なスタ―だが、彩輝直さん自身は「わりと淡々としているタイプ」という。見所の一つは目の力。華やかで、いろんな表情ができるように、まだまだ研究中ということだが、化粧法のちがいも含めて、蘇我入鹿と妖精という異なる魅力を堪能できる披露公演である。※次号のフェアリーインタビューは、花組の春野寿美礼さんの予定です。

 

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インタビュアー  名取千里(なとり ちさと)  
 (ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局 /宝塚NPOセンター理事  

主な編著書   
「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)   
「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)  
 「仕事も!結婚も!」(恒友出版)