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-バックナンバー- 2004年3月号 | ||||||||||||
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3月、ベガホールに歌声が響く 「宝塚の街は大好きな故郷。NPOコンサートで思いきり歌います」久しぶりに鳴海じゅんさんの男役の歌が聴ける 「退団の時機は不意に、いまだ、とわかると言われますが、本当にそうですね。私の場合は2002年9月、同期が主演する宝塚バウホール公演『ヴィンター・ガルデン』への出演が決まった時に、これを私の最後のバウ作品にしたいと思い、退団を決意しました。それまでも大好きな歌をたくさん歌わせていただき、どの作品に出ても今が一番楽しくて充実しているなと思える毎日でした。退団後はありがたいことに、いろんなところから舞台出演のお話を頂きまして、もう一度舞台でがんばってみようという気持ちになり、3ヶ月後にはお稽古を始めていました」 思い返せば鳴海じゅんさんの退団発表はあまりにも突然だった。1994年に『火の鳥』で初舞台を踏んでから10年。男役として、これからますます楽しみ、と思っていた矢先だったから残念でならなかった。 鳴海じゅんさんの宝塚最後の舞台は2003年3月23日、星組東京宝塚劇場公演『ガラスの風景』『バビロン』である。この公演ではトップスターを始め、8人が退団した。主要スターがこれだけ一度に辞めてしまうのも珍しかったが、何より感動的で思い出に残る舞台になった。 「退団時期を申し合わせたんだろうと、みんなに言われましたが、私の方こそ驚いてしまいました。トップの香寿たつきさんがお辞めになることも知らず、まして同期の朝澄けいも退団するとは、もうびっくりでした。彼女とは音楽学校時代、寮が同室で掃除当番の場所も同じだったし、入団後に離れていた組も私が星組に移籍して再び一緒になり、いよいよバウホールで共演もできると喜んでいたところでしたから」 鳴海じゅんさんが7年間すごした月組から星組に移った2000年10月、同期生は朝澄けい一人だった。初星組公演は全国ツアー。鳴海じゅんさんはショー『美麗猫』に最多出演と言えるほど出ずっぱりで大活躍した。すでに本公演で完成している作品である。あとから加わった鳴海じゅんさんは一人、稽古の遅れを取り戻さなければならなかった。 「ビデオデッキをつぶすくらい、お稽古しました。その、がむしゃらな私を見て星組の皆さんが手をさしのべてくださって、分からないことは、どんどん教えてあげるからね、と。だから、あっというまに星組っ子になりましたね。中でも、もつべきものは同期と言いますが、音楽学校時代から苦楽を共にしてきた同期は友達、兄弟、家族を超えた存在。一生の宝です。上級生と下級生がみんな、常に一緒に泣いたり笑ったり切磋琢磨しながら作品を創っていける世界はここしかありません。宝塚歌劇団の一員になれて本当に幸せでした。同期であっても、常にライバルという意識も自分にとってはすごくよかったと思います。宝塚ならではの厳しさが好きなんです。一致団結して、やるときはやる。だから夢のある、すばらしい舞台ができるのだと思います」 その宝塚を退団した鳴海じゅんさん。ファン時代から男役が好きで宝塚を目指し、男役一筋にがんばってきたから、宝塚歌劇以外の舞台に立つことに抵抗感がなくはなかったという。 「それは一つには、男役しか経験がないので女優は自信がないわ、と思ったんですね。でも出会いとかキッカケは大事にしたい。自分にとって、まだ舞台をやる時期なのかなと思い、お受けしました」 「エンジェルには台詞が全くなく、ゼスチュアだけでジュディの言葉を伝えました。男でも女でもない中性で実在しない架空の役。だから私も楽しめたし、お客様も新しい鳴海じゅんが観られて楽しかったと言ってくださって。改めてまた新たな鳴海じゅんを発見していこうかなと思うことができましたね」 2004年1月は青山劇場で『ドキドキナイト』という歌とダンスがたっぷり楽しめるエンターテイメントショーに出演。汐風幸、島田歌穂らと共演した。 「宝塚時代の1番の思い出は98年、東京宝塚劇場公演『WEST SIDE STORY』の新人公演で演じたリフです。大劇場の新公は盲腸で休演し、初めての大抜擢なのに出られない自分が悔しくて、出ます、と泣き喚きました。だから東京での新公に賭ける情熱はすごくて、あのパワーはどこから出るのかと今も思うくらい」 99年、『ノバ・ボサ・ノバ』新人公演のオーロも大好きな役。2000年『LUNA』新人公演は2番手のブライアン役で、しかも学年の長。出演者をまとめるプレッシャーも克服した。 「3月7日、宝塚ベガホールで久しぶりに男役を思い出して歌います。NPOを支援するチャリティコンサートですが、大好きな故郷に帰って来れるのはうれしいこと。なつかしい宝塚歌劇の歌を思いっきり歌うつもりです」 鳴海じゅんを全く知らない人との出会いを楽しんでいる。新しい自分自身を発見できるから、と言う。思えば心に刻まれる一シーンに必ず鳴海じゅんさんがいた。そんなスターの、終わりのない旅は始まったばかりだ。 |
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