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-バックナンバー- 2004年12月号 | ||||||||||||
紅葉狩りの楽しみが増える秋の清荒神清澄寺。鉄斎美術館から眺める全山紅葉の甲山も見逃せません。今、同館で開催されている「鉄斎 秋季展」は11月16日から3回目の展示になっています。 |
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鉄斎の内面で醸成された風景 | ||||||||
私は牧師の家に育ったものですから、子どもの頃から西洋文化の影響を受けていて、キルトをやり始めたのもアメリカにいた牧師の兄がキルトの雑誌を送ってくれたのがきっかけなんです。ですから、鉄斎のことは知っていても観る機会がなく、鉄斎美術館にも初めて伺いました。鉄斎といえば山水画を思い浮かべますが、仙人が棲む険しい山、切り立った岩や深い谷を描いた中国の風景図という少し恐ろしいイメージを持っていました。でも、鉄斎の山水画は中国の風景をモチーフにしながらも鉄斎の内面で醸成され、鉄斎流の心象風景になっていて恐ろしさは感じられませんね。それどころか、何気なく描かれた旅人や動物に遊び心を感じます。中国宋代の文人、蘇東坡の詩に題材を得た晩年の水墨画、「雲闕石門図」(上の写真・吉野さんの後)は、墨一色の大胆で自由な筆の運びに圧倒される作品ですが、近づいてよく見ると二人の人物が正面を向いて描かれていて、想像力をかき立てられます。 実際に中国には行っていない鉄斎が中国の風景をなぜ自分のものとして描けたのか不思議な気がしますが、それは、中国の多くの書物を読破し、自分の中に蓄積した膨大な知識から様々な発想が自ずと湧いてきたからでしょう。 「静観楽事帖」(2回目の展示)には、興福寺そばの老木の桜を押し花にした桜図、槐さいかちの汁で描いた梅花図、菩提樹の葉に描いた羅漢図などがあり、コラージュのようで楽しい画帖で一つひとつの画面がそれぞれ中国の逸話を題材にしていて、ここにも鉄斎の知識の豊富さを見るようです。 最近、私は施設で繕いのボランティアを始め、質素な生活の中で生まれたパッチワークキルトの原点を再発見させられています。手仕事の確かさと温かさを伝えることができるキルトですから、技術だけにこだわることなく、内面を自由奔放に表現した鉄斎のように、キルトにも心を吹き込みたいと思います。 |
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