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-バックナンバー- 2004年11月号 | ||||||||||||
清荒神清澄寺の境内にある蓬莱式の池。石の上で首をもたげて甲羅干しをする亀にこころ静かな時間を感じながら鉄斎美術館へ向かうと、鉄斎の画風の移り変わりを一堂に観ることが出来る「鉄斎 秋季展」が開催されています。期間中3回に分けて展示され、19日からは第2回が始まります。美術教師として長年勤め、洋画を描き続けている塚本龍さんと「富士山図」や「瀛洲僊境図」に象徴される鉄斎独自の大胆で力強い画風に至る変遷を29歳から89歳までの作品を通して鑑賞しました。 |
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気宇壮大な広がりを感じさせる構図 | ||||||||
師を持たなかったという鉄斎は、若い頃から大和絵や大津絵、山水、花鳥など様々な分野の画を描いていますが、指を使って描いた32歳の作品「層巒雨霽図」(1回目展示)は墨のかすれが面白く、現代の抽象画に通じるものを感じます。山の表現も墨を薄く使って遠近感を出すのではなく、濃い墨で上へ上へ積み上げ存在感を表しているのが鉄斎らしい。 画風の変遷を見ていくと、60歳位からは青墨や代赭色も美しく、また、運筆が変わってきているのがわかります。 1回目の展示では鉄斎が文人として最も尊敬した中国宋代の蘇東坡の詩「赤壁賦」を描いた作品が、60歳代、72歳、87歳と年代別に展示され20数年の変遷が一目でわかるよう工夫されていましたが、晩年にこれほど画風が変わる画家も少ないでしょう。技術的な硬さが見られる描法から色彩豊かな情感溢れる作品に変り晩年は透明感のある美しい墨で精神世界を奔放に描いている。鉄斎にして描ける赤壁図になっていますね。 鉄斎は滝が好きだったのか赤壁図はもとより風景に滝をよく描いています。観る者の視点が滝をつたって、上へと昇っていき宇宙に引っ張り上げられる、これもまた鉄斎独特の水の表現と言えるのではないでしょうか。 鉄斎が理想とする山水の世界を描いた「青緑山水図」(上の写真、塚本氏の後)は画面の下半分が河というダイナミックな構図で、水の表現が気宇壮大な広がりを感じさせます。この作品は六曲屏風ですが、軸など縦の画面でも広がりを感じさせることが出来るのが鉄斎のすごさでもありますね。 南画でありながら、それを越えた奔放さに魂を揺さぶられるのです。 洋画を描く者にとっても鉄斎の画は何かの暗示を与えてくれます。自分の中にある日本人としての感性が蘇らされるのだと思うのです。 |
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