宝塚の舞台が好き。その思いの強さが、男役スター・愛音羽麗の魅力を引き出していく。 1998年、花組に配属。「花組が好きで、花組の舞台ばかり観ていたので、大浦みずきさん、安寿ミラさん、真矢みきさんというファン時代に客席で観ていた方たちとお稽古場でご一緒できることが、まだ信じられませんでした」 翌1999年、バウホール公演『ロミオとジュリエット'99』に、ロミオの友人ベンヴォーリオ役で出演する。「その公演で主演された水夏希さんが今回の公演に宙組から特別出演されています。私は研3の時でとにかく必死でしたから今ならもう少しまともにできるのにと、この間、もう1回『ロミジュリ』をやりたいねという話で盛り上がったんですよ」 2000年には、初めての海外公演に選抜メンバーで参加した。「ドイツ・ベルリン公演、なつかしいですね。プレビューでは客席いっぱいの方々がワーッ、ピューッと歓声と口笛で応えてくださって、鳥肌がたつほど感動し、涙がでました」 そして2002年、『琥珀色の雨にぬれて』の新人公演で初めて女役エヴァを演じた。「配役表を見てびっくりしました。お芝居の女役は初めてでしたし、しかも専科の矢代鴻さんの役。手も足も出ない状態から始まって、もうやるしかないと。でも演じ終わった後は、やってよかったと思いました。それまでは、どうしたら男役になるんだろうと、力を入れすぎていた部分もあったことに気づいたんです。本来は女性だから、女役を演じると自由にできるところがあり、男役ももっと楽しんでいこうと思えたんです」 2003年3月、バウ・ワークショップ『おーい、春風さん』に清太役で主演。「他の組と比べるのではなく、自分たちでやれることを楽しめたらいいなと思いました。子役だったので、子どもたちと遊んでみようと思い、みんなで小学校に遊びに行ったんですよ」 その年の5月、『野風の笛』で、新人公演に初主演。轟悠が演じた松平忠輝役に挑んだ。 8月13日から宝塚大劇場で上演中の『La Esperanza(ラ エスペランサ)』では、刑事アンヘルと秘書のペペのほかに、ダンサー役でタンゴを踊る。「いろんな役をさせていただきますので、すべて違う人物になれたらなと思っています」 華やかさは愛音羽麗さんの大きな魅力だ。舞台のどこにいても、まばゆい光を放っている。「ショー『TAKARAZUKA舞夢マイム!』は春野寿美礼さんのゼウスを中心としたギリシャ神話の世界です。化粧も色を変えたり、まつげの形を変えたりして、人間ではない神秘的な雰囲気が出るよう工夫しています」 愛音さんは美少年ガニュメデスに扮して、恋多き神ゼウス役の春野寿美礼と踊る。 「今の自分にないものを創り上げていける、そんな役に巡り会えて、ここまでやってくることができました。これからもいろんなことに挑戦していきたいです」 坂道を駆け上る逞しさと、清々しさが同居している希有なスターである。 ※次号のフェアリーインタビューは、星組の真飛 聖さんの予定です。
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インタビュアー 名取千里(なとり ちさと) (ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局 /宝塚NPOセンター理事
主な編著書 「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷) 「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター) 「仕事も!結婚も!」(恒友出版)