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-バックナンバー- 2003年12月号

  ケガ・病気知らずの、活力溢れるムードメーカー霧矢大夢さんが、まさかの病気で入院したのは初夏の頃だった。誰もが信じられなかったが、霧矢さん自身が一番信じがたかったのではないだろうか。

「体力に自信があったので、病院とは疎遠でした。自己管理はしているつもりでしたが、ただの疲れかなと油断したんですね。ご迷惑をおかけしましたが、病気を経験して、自分自身を見つめ直し、宝塚のすばらしさを改めて知ることができました。お稽古中、今まで当たり前だったことが、なんてしあわせなことなのかと、感動してばかり。表面上は極力、平静を装っていましたが、心の中では涙、涙でした。自分の中に生まれ変わったくらいの新しい生命力が満ちているので、この思いを何とかして舞台からお客様にお届けしたい。なぜ今病気になったのかという意味が必ずあるはずなので、それをこれから舞台に立ちながら考えていくつもりです」

リハビリ期間中、霧矢大夢さんは宝塚歌劇はもちろん、いろんな舞台を見て歩いた。周りからは、そんなに活動して大丈夫?と心配されたが、どうしても見ないではいられなかった。

「宝塚の舞台を見に来ると、客席のお客様が、おめでとう、と拍手をしてくださいました。本当に思いがけずたくさんの愛をいただき、この経験を生かさないと、という気持ちでいっぱいです」

体力のある霧矢さんは、驚異的な回復力で、舞台に戻ってきた。今年は入団10年目。思い出深い役を数えるときりがないが、『長い春の果てに』のアルノーは、芝居のターニングポイントになった役だ。地味だが、結婚するならアルノーよ、と思わせたのは霧矢大夢さんの芝居のうまさである。

「人生の挫折を経験した大人の男性役は初めてで、しかも相手役は芝居に定評のある上級生の汐風さん。歌もダンスもなく、短い出番で存在感を出すのは難しく、今までの役作りは薄っぺらかったなと思いながら必死に取り組みました」

『ガイズ&ドールズ』の踊り子アデレイドも忘れられない。このまま霧矢大夢さんがブロードウェイにさらわれたらどうしようと思ったほどかわいく、魅力的だった。

「男役を続けていると筋肉が逞しいんですよ。ダイナミックなブロードウェイの女優さんを参考にしました」  

宝塚歌劇90周年の2004年7〜9月は、花組公演『恋人たちの夢(仮題)』『Takarazuka舞夢!』に特別出演が決まっている。ショーの作・演出・振付は元英国ロイヤルバレエのプリンシパル・ダンサーで、ミュージカルの振付・主演でもロンドン演劇界の話題を独占しているアダム・クーパー氏が手掛ける予定。座付作者の藤井大介との共同オリジナル・ショー作品だ。

「とても楽しみです。今は声を大にして宝塚が、舞台が大好きですと叫びたい。真にハートフルな、生命力に満ち溢れた舞台をお送りしたいと思います」

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インタビュアー  名取千里(なとり ちさと)   (ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局   /宝塚NPOセンター理事   主な編著書   「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)   「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)   「仕事も!結婚も!」(恒友出版)

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