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-バックナンバー- 2003年10月号 |
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清荒神清澄寺の境内に咲く鮮やかな紅白の百日紅(さるすべり)。8月20日から鉄斎美術館では「鉄斎 文人の器玩」展が開催され、鉄斎が絵付けしたり、揮毫した茶器などの道具類105点が2回に分けて展示されています。 鉄斎と交流の深かった指物師、中島菊斎や陶工、清水六兵衛などの作品に大胆に描かれた画や書。 戦後の荒廃した心に茶道が「生きる勇気を与えてくれた」という、茶道歴54年の国木宗揚さんと文人、鉄斎の一面を垣間見る珍しい器玩を観賞しました。 |
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心から楽しんで道具に画や書を描く鉄斎に触れる。
鉄斎は売茶翁高遊外を尊敬し、煎茶道に親しんだと聞いていますが、煎茶も抹茶もルーツは同じ中国です。中国で禅を学んだ栄西という禅僧がお茶の種を日本に持ち帰りました。その精神は仏道に通じ、そこに書や画、活け花など芸術性が加わった総合文化が茶道です。礼儀作法や様式美のみが強調されがちですが、茶道の心は言うなれば人の道なんですね。煎茶が文人のたしなみとして広がったのはその精神性にあるわけです。 煎茶道具のうち木工品は名工といわれ鉄斎と交流のあった指物師、中島菊斎の作品が展示されていますが、桐の文台(松芝不老絵文台・1回目の展示)に描かれた松は力強い躍動感を感じます。茶壺や茶道具を入れる箪笥には四君子が裏まで描かれているのを観ると描かずにはおれない鉄斎の遊び心というか、自由に楽しく描いた気持ちが伝わってきます。 京の焼物師、三代目清水六兵衛の作品に藍で名花を描いた吸物碗十客も味わい深く素晴らしい。迷いのない筆運びは見事ですね。大きい道具には大胆に、小さな碗や香炉には繊細に描いているのにも驚きます。売茶翁が茶を売るときに目印とした「清風」の旗(清風二字売茶式大旗・1回目の展示)、私はこの旗をお茶席の床の間に掛けてみたいと思う衝動にかられます。 マニュアル化された茶道具も然さることながら、本来茶道具は唐物と言って中国・韓国から渡来した美術品を使用したのが始まりですから、鉄斎のように自由な発想で使っていきたいですね。 鉄斎の器玩は珍しいものですし、その数も鉄斎美術館が日本で一番多く収蔵されているとのことですから2年に1度の器玩は鉄斎の一面を知る機会でもあり、茶道をしているものにはこれからも楽しみです。 |
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