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-バックナンバー- 2002年8月号

 今、鉄斎美術館で開かれている「鉄斎 名作展―茶の美術―」は3回目の展示替が行われ、8月11日まで開催されています。中国唐時代の文人陸羽が喫茶法の基礎を築き黄檗宗の開祖、僧隠元によって日本に伝えられ江戸時代中・後期に文人の間に広まったといわれている煎茶道。鉄斎も精神性を重んじる煎茶の世界を好み、茶人や煎茶にまつわる逸話などの画を多く描いています。
この展覧会を公務の合間を縫って時間を作ってくださった正司泰一郎宝塚市長と訪れました。


会期 〜8月11日(日)
月曜日休館 開館時間:午前10時〜午後4時30分(入館は4時まで)
入館料:一般300円、 高大生200円、 小中生100円
(老人、 身体障害者手帳提示の方は各々半額)
宝塚市米谷字清シ1 清荒神清澄寺山内 TEL0797−84−9600

 

 

 

 

 

美術館は文化を継承する場

 鉄斎が煎茶道に傾倒し、 こんなに多くの茶道具に絵や書を描いているのに驚きました。 一流の陶芸家や指物師との合作は肩の力が抜けていて本当に楽しみながら描いたんでしょうね。 遊び心で造ったと思われる自作の香炉なども面白いものです。
 煎茶の法は中国から江戸時代、 日本に伝わり、 売茶翁という肥前の僧によってその精神が高められ文人の嗜みとなったようですが、 仏教にしても焼物にしても、 日本で熟成され完成度が高められた。 日本は、 海外から入ってきた文化が流失しなかったので、 長い時間をかけて技術だけでなく精神性も熟成されていったのでしょうね。 文化の継続性という点では海に囲まれているという特性が幸いしました。

 

 日本で熟成された素晴らしい文化をもっと見直し、 プライドを持って次代に伝えたいものです。 宝塚市でも茶の文化を広く知ってもらおうと昨年、 煎茶、 表千家、 裏千家で宝塚茶道協会を発足、 ソリオホールで市民向けのお茶会を開催していただいていますし、 公共の施設には本格的な茶室も設けていますのでおおいに利用していただきたいと思います。
また、 文化を継承する場のひとつとして美術館の存在は貴重です。 鉄斎美術館のような特長のあるプライベート美術館は市民の財産とも言えるのではないでしょうか。
 私は海外からゲストをお招きした時は必ず、 ご案内するのですが、 鉄斎の作品だけを集めた日本でも唯一の美術館であり、 日本の文化に触れていただくいい機会になります。 外国の方は、 まずその土地の美術館を訪れるのだそうです。
市民からは美術活動の拠点がほしいとの声も多いのですが、 これからは何もかも行政がつくるのではなくナショナルトラストのような方式で市民が資金を出し合って文化を保存するというような形になるのではないかと思います。 市民からの寄付を目的別に市民ファンドとして積み立てるという仕組みを今考えているところです。

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