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-バックナンバー- 2002年4月号

 「自分でいうのは図々しいのですが、匠ひびきの全てが出せる、男役冥利につきる舞台ですね。稽古場から出し惜しみなくやってきたので、あとは最後の瞬間まで心身ともにベストの状態を保つこと。それだけを考えています。フィナーレは感動して我を忘れてしまうほど、曲も振りも、私の気持ちが高ぶるように仕掛けられている。私が1番、生き生きするようにつくってくださっていて、それにのっかっていけばいいというのは幸せですね」
 この「Cocktail」では、花組出身の安寿ミラが2場面を振り付けているのも、宝塚ファンとしては大いに楽しみなところだ。
 「演出家の先生からお話があった時は、以前の私を知っていらっしゃる安寿さんの前では、緊張してしまうんじゃないかという気がしたのですが、シアター・ドラマシティ公演『カナリア』を観ていただいた時、とてもほめてくださって「私、やるからねっ」と力強いメッセージをくださったんです。安寿さんの意気込みが、すごく新鮮でした、私に振りをつけながら安寿さんが耳元で「一度、研5に戻りなさい」って。みんなが見ている前なんだけど本当に研5の気分に戻ってしまって、熱いものが自分の中にこみ上げてきました。振りができあがった時に、気持ちの上でやっと安寿さんにちょっと追いつけたように感じましたね。安寿さんのトップ時代の経験と、退団後に外の舞台で影響を受けられた刺激とを私にくださったので、愛情いっぱいの、いい場面になっていると思います。安寿さんが私に託された思い、花組の組子たちの思い、そしてお客様が期待してくださる思い、それらのすべてに応えられる舞台をつとめたいと、欲張りなんですが、そう思っています」
 この舞台を通して、今度は匠ひびきさんが花組の組子たちに伝えていくものがある。
 「お稽古場で、私は自分をさらけ出しました。今の私は、これ以上でも以下でもないという思い。それをストレートに出し、のびのび生き生きとやってこられたのは、組子たち全員に舞台づくりに参加している責任感があるからです。今は下級生が、自分の意見を言いに来る。正直言って、気も遣ってくれているんだけど、意見も言えるようになったことを、いいなあ、と思っています。それが素直に受け取れるし、気持ちがいい。気づいても言ってもらえないことほど寂しいものはないじゃないですか。年齢も学年も越えた仲間意識の中で、自らが気づくことに勝るものはないと思います」
 匠ひびきさんのために、チャーリーという名のカクテルが生まれた。すみれ色のリキュールを底に沈めた、黄色のカクテル。トップスター匠ひびきのように凛々しく薫り高い味だった。



インタビュアー
 名取千里(なとり ちさと)

  (ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局
  /宝塚NPOセンター理事
  主な編著書
  「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)
  「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)
  「仕事も!結婚も!」(恒友出版)
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