料理もこころのケアーという点で鉄斎の絵に通じるものが
鉄斎は日本各地を自らの足で歩き、 風土を肌で感じ、 心に焼き付け、 その風景を心のままに描いたそうですが、 私も最近、 旅をする機会に恵まれ思うのは、
その地方にある自然の恵み、 日本の風土のすばらしさです。 旅は風土が育んだ日本料理の心を思い起こさせてくれます。
文化は時間の流れの中で変化していきます。 食文化もそのひとつですが、 変化の中にあっても芸術と同様に大切なのは心の安らぎを与えるという普遍的な価値です。
日本料理が伝えて来た心を料理と共に食してほしい、 と思うのです。
今は茶会などでしか味わうことができなくなりましたが、 庭に敷かれた石、 季節の花、 そして床の間に掛けられた一幅の墨絵や書の墨文字。 それら日本の文化はやはり日本人の心を和ませてくれます。
黒墨一色の濃淡で表現された世界を眺めていると心に落ち着きが戻ります。
鉄斎はデッサンなしで自分の心をそのまま筆で表現し心を生かしたのだと聞いておりますが、 我流といわれる鉄斎の世界ができあがるまでには基本を十分身につけ、
万巻の書を読み旅をし、 あらゆる勉強を人生の喜びとし苦しみを超越、 自分のものとしたからこそ自分の喜びを表現できるのでしょう。 この展覧会の絵からは平穏無事に生きていることに感謝し、
自分の喜びをストレートに表現している鉄斎の人間性を感じとることができます。
鉄斎の水墨画を観ると心が和み、 癒されるように料理も日本の風土を感じながらその心を食していただければ心のケアーになるのではないでしょうか。
利便性だけを追求するのではなく、 心を大切にしていきたいものです。
宝塚には日本文化を伝える素晴らしい鉄斎美術館があるのですから、 中学校の文化活動などに取り入れ中学生にも観てほしいですね。
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