ものすごいオーラを感じて、 正直言ってすごく悔しかったんですね。 これはなんだろう、 とショックで一瞬、 身体が固まってしまいました。
それからです。 次の舞台が決まっていない状況の中でも、 今は何をしなければならないのかを自分でみつけなきゃいけないと、 本気で自分自身と戦えるようになりましたね。
中国ツアー公演から帰国後、 血液型について書かれた本を読みました。 O型から順にA型、 B型が生まれて、 最後にできたAB型が一番現代人なんだそうです。
A型の人はお肉より野菜を食べるといいらしくて、
週3回くらい魚でタンパク質をとればいい。 そういう食生活をするとどんな性格になるかなどが書かれていて、 たとえばクレマンの血液型を何型にしようかというように、
役づくりの参考になる。 だから血液型の本を読むことは私にとって決して芝居と無関係ではないのですが、 小説を読むことは人間の心理を深く追究するためにとても必要なことなんです。
女性も男性も人間としての感情にはそれほど差はないと思います。 弱い男性がいれば、 強い女性もいる。 どうすれば与えられた役に近づけるかと考えたときに、
人間に対する想像力が鍛えられているかどうかは大事な問題なんですよ」
初風緑さんは1冊の小説を5、6回、 読み返す。 主人公、 敵対者、 傍観者など、 登場人物それぞれの視点から読み直すのだ。
「宝塚の芝居も歌もダンスも大好きだから、 何でも仕事に結びつけて考えてしまうんですよ。 芸の世界って、 知れば知るほど、 もっと知りたくなる。
知ることで自分の考え方が変化するから、 また欲が出てくるんです。 永遠に続いて終わりがないのでしょうね」
役づくりの種明かしをするような話は滅多に聞けるものではない。 出し惜しみなく話してくれる初風緑さんの瞳の透明度に、 思わず視線が引き寄せられる。
自分自身の身体や心が感じるものを通して人生の真実を発見する、 その精神的な作業のくり返しが苦ではなく、 むしろ楽しいと強く思える、
稀な人なのだ。
12月13日、 「吉崎憲治オリジナルコンサート・TAKARAZUKA FOREVER」 に出演する。 歌う曲はまだ未定だそうだが、
忘れられない思い出の曲はバウ公演 『タイム・アダージオ』 の主題歌。 初舞台後に配属された花組のトップスター大浦みずきに 「ダンスが好きなのかな」
と聞かれ、 「はい、 大好きです!」 と弾んで答えた時の胸の高鳴りが蘇ってくるという。
インタビュアー
名取千里(なとり ちさと)
(ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局
/宝塚NPOセンター理事
主な編著書
「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)
「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)
「仕事も!結婚も!」(恒友出版) |
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