「ベルサイユのばら2001 ― オスカルとアンドレ編」 のオスカル役を最後に、 宝塚歌劇団を退団する星組トップスター稔幸さん。
すでに新東京宝塚劇場での公演を終えており、 宝塚大劇場公演も10月1日に千秋楽を迎える。
オスカルと言えば1974年に池田理代子原作の劇画を宝塚歌劇化した初演以来、 トップスター又はトップ候補生によって演じられてきた超人気キャラクターだ。
今回の稔幸さん主演 「オスカルとアンドレ編」 は新バージョンなのだが、 ファンにとってオスカルのイメージはすでに劇画のページを開けるまでもなく完璧にできあがっている。
ということは稔幸さんには、 成熟したトップスターのキャリアでもってサヨナラ公演でオスカルを演じる明白な理由があるはずなのだ。
「舞台を観て下さったお客様からいただいた言葉の中で最も多かったのが、 人間としてどう生きようかと常に葛藤しているオスカルの姿に共感できた、
というものでした。 ヒーロー的、 ヒロイン的な華やかさだけでなく、 オスカルの内面を見ていただけたのが何よりうれしいですね。 自分はずっと男役を演じてきたので、
稽古が始まったばかりの頃は女性であるオスカルに扮して男役に寄り添うラブシーンに少し違和感がありました。 でも舞台にのると性別は全く気にならず、
一人の人間として立っていられた。 ああ自然にやればいいんだと思いました。 男役をやっている自分も女性だけれど、 ふだん女らしいシナを作ったりはしません。
ましてオスカルの場合はフェルゼンが女性であることを見抜けなかったくらいなので、 わざわざ女らしさを意識して演じる必要はないなと。
東京公演の後で全国ツアー 「風と共に去りぬ」 のバトラーを演じた時も、 男役の衣装を着たら、 あえて男役らしく振る舞おうとしなくても、
自然に性別が出てきたし、 これが宝塚マジックなんだと再確認できました」
「ベルサイユのばら2001 ― オスカルとアンドレ編」 を観ると、 稔幸さんが最後の舞台でオスカルを演じる意味がよくわかる。
本当のキャリアはまた、 新鮮な出会いをもたらすものだ。
「東京公演でアンドレが三人、 役替りで出演しましたが、 相手が替わるたびに全く違う作品かなと思うくらいに自分自身が変わって行きました。
それが新鮮で、 おもしろかった。 三人ともそれぞれの間を持っているんですよ。 二人が寄り添って手を拡げていくだけの場面でも三人三様の味わいがあって、
それに対応して変化していく自分がおもしろい。 最後の舞台でまた一つ勉強できたという充実感がありました」 稔幸さんは、 退団の瞬間まで宝塚の生徒として全力疾走する、
と言う。 退団後の道については何も決めないのだろうか。
退団後はどんなシーンで稔幸さんに出会えるのだろう。 ファンにとっては気にかかるところだ。
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