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-バックナンバー- 20001年7月号



世界最高位で、 登竜門を通過

 木嶋真優さんがヴァイオリンを始めたのは、3歳半。ピアノはまだ指が届かないけれど、ヴァイオリンなら子どもサイズがあるから…とピアノ教師である母の勧めでレッスンに通 うことに。そして、4歳から3年連続して、バロックザールの子どものためのコンクールで金賞を受賞するという非凡さを、いきなり発揮。けれど当の本人は「小さすぎて、全然覚えてないんですよ(笑)」。
 当時から、人前で演奏をしたりコンクールに参加するのは好きだったが、はっきりと「ヴァイオリニストになりたい」と決めたのは、小学2年の時。「五嶋みどりレクチャーコンサート」に参加し、あこがれの彼女の真横で緊張しながらも、自分に欠けていたものを7歳にして感じたという。
「それからは、思い通りの音色を出すにはどうすればいいかって、考えながら弾くようになったんです」
 真優さんがこれまでに受賞した数々のコンクールは、あげればきりがない。神戸市長賞、京都市長賞、松方ホール音楽賞といった賞も手にしてきた。そして昨年秋には、若手ヴァイオリニストの登竜門とされるポーランドの第8回ヴィエニアフスキ国際ヴァイオリンコンクール17歳以下部門に参加し、初めての国際コンクールで堂々の最高位 (1位なしの2位)に輝いた。
「小さいころから、ずっとあこがれていたコンクールだったんです。 いつか私は世界で絶対1位 になるって思ってたので、その第1歩になったかなと思います。でも、日本では全然知られていないんですよ」
 受賞2日後には、受賞者コンサートにも出演。ハードスケジュールのおかげで、「結局どこも観光できなかったんですけど、窓からポーランドの街並を見ているだけで、満足でした」


素顔の真優さんは、まだあどけなさが残る14歳の少女だが、ヴァイオリンに向かう姿はすでにプロフェッショナルだ。


2度目のリサイタルはベガ・ホールで

 光ガ丘中学に通う3年生。レッスンがあるから、なかなかテレビは見られないけれど、「モーニング娘。」が好きな、ごく普通 の14歳。むしろちょっと大人びた格好を好む最近の中学生よりも、あどけない表情を見せる。
「遊びたいし、テレビも見たいので、時々練習は嫌だなって思います。でも他に1番になれることもないし(笑)」。そう言いながらも弾き始めると、時間を忘れるぐらい集中するそう。
 これまで国内外のオーケストラとは多数共演してきたが、今年2月、ザ・フェニックスホールで初のリサイタルを開き、高い評価を得た。「わたしからのメッセージ、というタイトルで好きな曲を集めました。思い通 りに弾けたし、 後半は楽しむこともできたので、よかったと思います」と、堂々たるもの。
 7月6日には2度目のリサイタルを地元宝塚の「ベガ・ホール」で開く。
「今回は 『あなたへのメッセージ』。好きな曲ばかりなんですが、『14歳にはまだ表現できない』と言われる曲にも、あえて挑戦します」
 年に3期、横浜までレッスンに通っているザハール・ブロン氏が薦めた「金鶏」が今回のおすすめ。リムスキー=コルサコフの同名オペラのタイトル曲で、日本ではあまり弾く人がいないが、「いい曲なので流行らせたいです」
「地元でのリサイタルなので、受験で忙しいクラスの友達も聞きにきてくれるって」と、うれしそう。
 真優さんの今後は、ドイツのケルン音楽院ヤングコースに10月より留学予定で、得意な英語の他にドイツ語も勉強中。そして早くも10月25日、ヴェルテンブルクフィルハーモニー管弦楽団との共演が決まっており、これがドイツデビューとなる。夢は、世界的なヴァイオリニストはもちろんだけど、演奏しかできない偏った人間ではなく、常識を持ち、人ときちんとしゃべれる人になりたいという。
「歴史や民族などから生まれる音楽もあるだろうし、背景を知って本当の意味での音楽というものを理解したい。勉強するってことを、忘れたくないです」 と大人のセリフが、かわいらしい口元から流れた。
 音楽の街宝塚から世界へ羽ばたく木嶋真優さん。ドイツへ旅立つ前に地元で開催される今度のリサイタルは、聴き逃せない。