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-バックナンバー- 20001年6月号

 「オスカルをさせていただくことが決まってから、 それまで話をしたことのなかった生徒からも 『オスカルをやるんでしょっ』 と声をかけられるんですよ。 私も劇画を読んで1番好きになった人物なのでうれしいです。 オスカルは女性でありながら後継ぎの男子として育てられた男装の麗人ですよね。 宝塚の男役をやっている自分と近いんですが、 男役のまま演じるとオスカルが男に見えてしまう。 自分はたかだか男役8年ですが、 オスカルの台詞が男っぽいので、 つい男役の演技が出てしまい、 先生に 『オスカルは男じゃない』 とよく言われました。 最初は仕種を女らしくしてみたり、 声を高くしてみたり、 いろいろやってみたんですが何をやってもオスカルではないなと。 オスカルは、 気持ちは女で、 見かけは男役。 これまでやってきた全くの男役との微妙な違いを何とか自分のものにしたいです」
 宝塚歌劇が 『ベルサイユのばら2001』 の東西同時上演で21世紀最初の春を迎えている。 宝塚大劇場は4月6日、 宙組公演 「フェルゼンとマリー・アントワネット編」 が幕を上げ、 水夏希さんは専科、 彩輝直との役替りでオスカルとアンドレを演じた。 6月29日からは東京に移り、 初めての新東京宝塚劇場での公演をオスカルで迎えることになる。
 先月号の取材の折りに3学年上級生の彩輝直が、 「水夏希は再演の 『ベルサイユのばら』 が終わってから入団しましたが、 よく勉強していますよ」 と言っていた。 水夏希さんは1993年 『BROADWAY BOYS』 で初舞台のラインダンスを踊った学年である。
 「再演に出演された上級生は始めの鐘がカランと鳴っただけで鳥肌がたつほど、 『ベルばら』 の世界がわかっていらっしゃる。 自分は、 ベルサイユ宮殿の本を開いて、 このあたりを人が歩いていたのかと想像するしかない。 歴代の方のビデオもたくさん見ましたが、 お稽古が始まったばかりの頃は、 ついていくのが大変で、 ちょっと待ってください、 と心の中で何度も叫びました。 組の半分以上の生徒が 『ベルばら』 以後に受験した世代なので、 流れをつかむまでは上級生に引っ張っていただいた感じです。 世の中全体がユニセックスな時代になってきている中で、 宝塚の典型的なコスチュームプレイができ、 男役と女役の型をしっかりと勉強できるのは、 すごく幸せですね」
 宝塚に入るキッカケになった作品だけに、 思い入れも強い。 推薦入学で大学に行くつもりで猛勉強していた県立千葉女子高校2年の冬、 友人に誘われて観たのが東京宝塚劇場雪組公演 『ベルサイユのばらーアンドレとオスカル編』 だった。 宝塚歌劇は何度か観たことがあったが、 『ベルサイユのばら』 の華やかさは格別だった。 何の迷いもなく 「ここに入りたい、 私もやりたい」 と思ったという。

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