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-バックナンバー- 20001年5月号
 
メールアーティスト  嶋本昭三さんと観る
「鉄斎 春季展−印癖を娯しむ−」




 4月27・28日にはツツジの花が満開の中、 春の大祭 「春季三宝荒神大祭」 が行われる清荒神清澄寺。
 鉄斎美術館では一足早く3月23日から 「鉄斎 春季展 −印癖を娯しむ−」 が開催されています。 落款をはじめとする多くの印を通して鉄斎の作品が楽しめるように工夫され、 興味がそそられます。
 メールアーティストでスタンプアートも制作されている現代絵画の嶋本昭三さんと企画展を訪れ、 鉄斎の印に込められた思いに心を馳せながら鑑賞しました。



会期 〜6月3日(日)
※月曜日休館 但し4月30日開館 5月1日休館
開館時間 午前10時〜午後4時30分 (入館は4時まで)
入 館 料 一般300円、 高大生200円、 小中生100円 (老人、 身体障害者手帳提示の方は各々半額)
宝塚市米谷字清シ1  清荒神清澄寺山内 TEL0797−84−9600
嶋本昭三・1954年 「具体美術協会」 の創立に関わりネーミングの提案者でもある。 56年の野外展からトレードマークの瓶詰絵具を画面に炸裂させる手法を発表。 93年にヴェネチアビエンナーレに招待出品、 99年にはオノヨーコと共に再び招待される。 4月はイタリアで展覧会。 宝塚造形芸術大学教授。 昨年、 花の道にインキュベーション工房を開き、 新しい手法の作品を発表。
印の中にも主張がある  
 外国には切手の消印をもっと面白いものにしようというところから始まったスタンプアートというジャンルが確立されていて、 私も25年前からメールアートを始め、 30種以上のオリジナルスタンプを作っています。 20年前に作った三原色の自画像のスタンプは当時大いに話題になりましたよ。
 今回の鉄斎美術館は 「印癖を娯しむ」 という一風変わった企画展で、 大いに興味がそそられました。
 日本では署名と併せて捺す落款印が一般的ですから名前や雅号だけかと思っていましたが、 鉄斎の絵には6つも捺してあるものもあってびっくりしました。 その位置や大きさがそれぞれに違っているんですが、 微妙なバランスでそれぞれが生かされていて絵がしまっているんですね。 鉄斎が好んで捺した富岡百錬や銕道人などの落款印の他に、 気に入った詩文の一節や中国の故事を彫った印、 尊敬する師の用いた印の摸刻、 賛文の始まりに押してある絵模様のような面白い印など印にも主張があることを再発見しました。 鉄斎の遊び心も感じますね。 曼陀羅堀 (まだらくつ) と彫られた最晩年の印は 「人は一色ではいかん。 色々のものを摂取してまだらなのがよい」 という鉄斎が行き着いた境地じゃないでしょうか。
 私はそんな鉄斎の型にはまらないところが大好きで 「鉄斎に挑む」 という作品を作ったことがあります。 瓶に絵の具を入れてキャンバスに投げて絵を描きその上に鉄斎の書を貼ったものです。 鉄斎は賛に 「世間で画家と呼ばれないでいるのは幸いだ」 (寒江万里図) とか 「私のように口下手であるのがよろしい」 (桜花瓶図) とか書いているのを読むと親近感がわきますね。 私も人にあまり画家だとは思われていないので・・・。
 鉄斎美術館では思いも掛けない面白い作品 (日月三星無量寿仏図・左上の写 真内右) に出会えるのも楽しいんじゃないでしょうか。

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