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-バックナンバー- 20001年5月号 | ||||||||||||
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印の中にも主張がある
外国には切手の消印をもっと面白いものにしようというところから始まったスタンプアートというジャンルが確立されていて、 私も25年前からメールアートを始め、 30種以上のオリジナルスタンプを作っています。 20年前に作った三原色の自画像のスタンプは当時大いに話題になりましたよ。 今回の鉄斎美術館は 「印癖を娯しむ」 という一風変わった企画展で、 大いに興味がそそられました。 日本では署名と併せて捺す落款印が一般的ですから名前や雅号だけかと思っていましたが、 鉄斎の絵には6つも捺してあるものもあってびっくりしました。 その位置や大きさがそれぞれに違っているんですが、 微妙なバランスでそれぞれが生かされていて絵がしまっているんですね。 鉄斎が好んで捺した富岡百錬や銕道人などの落款印の他に、 気に入った詩文の一節や中国の故事を彫った印、 尊敬する師の用いた印の摸刻、 賛文の始まりに押してある絵模様のような面白い印など印にも主張があることを再発見しました。 鉄斎の遊び心も感じますね。 曼陀羅堀 (まだらくつ) と彫られた最晩年の印は 「人は一色ではいかん。 色々のものを摂取してまだらなのがよい」 という鉄斎が行き着いた境地じゃないでしょうか。 私はそんな鉄斎の型にはまらないところが大好きで 「鉄斎に挑む」 という作品を作ったことがあります。 瓶に絵の具を入れてキャンバスに投げて絵を描きその上に鉄斎の書を貼ったものです。 鉄斎は賛に 「世間で画家と呼ばれないでいるのは幸いだ」 (寒江万里図) とか 「私のように口下手であるのがよろしい」 (桜花瓶図) とか書いているのを読むと親近感がわきますね。 私も人にあまり画家だとは思われていないので・・・。 鉄斎美術館では思いも掛けない面白い作品 (日月三星無量寿仏図・左上の写 真内右) に出会えるのも楽しいんじゃないでしょうか。 |