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-バックナンバー- 2001年10月号

外から見えるガラス張りの教室に、 様々な作品と笑顔

 東西に長いアピア2。飲食店が並ぶ2階の一番奥の突き当たりにある、ガラス張りのスペースが「アピア工藝居房」。ここで染もの、木工、陶芸教室が開かれている。
両開きのガラス戸を開けると、左に事務所、右にはガラスの壁面に沿って作品が並び、外を歩くほとんどの人が中を覗き込んでいく。部屋の中央には、厚い木の机とイスがデーンと置かれていて、ここが先生と生徒との楽しみの場、「サロン」になる。その奥が教室。
「アピア工藝居房」の中で一番活発なのが陶芸教室。広々とした教室、玄人焼き上げ(還元焼成)もできる5台の窯、6台の電気ロクロ、豊富なうわ薬など、商業ビル内の教室なのに充分な設備。
 講習日は、水曜以外毎日日替わりで、関西で活躍中の個性豊かな若手陶芸家が講師として指導にあたるので、曜日や作風が自分に合う講座を選ぶことができる。宝塚というイメージ、駅前という立地の良さ、あたたかい陶芸家の先生方に惹かれて、市内だけでなく神戸方面からも多くの人が通っていて、中には10年近く続けている人も。
「アピア工藝居房」ができて2年目に入会した栗山英彦さんは「廊下を通る度に、楽しそうやな〜と思っていたんです。1年間ガラスの外から見ていたのですが、どうしてもやりたくなって入会しました」

 


子どもの感性を忘れない怪獣シリーズには居房のコンセプトが

 10年前に陶芸教室に入会した栗山さん。会員の作品展に、「悪魔(怪獣)くんシリーズ」を出品。「他の人は食器などを作っていたのですが、何でも自由に好きなものを作ったらいいと先生に言われたので…」と、大胆に楽しんで作ったユニークなキャラクターは評判になり、「悪魔くん」が教室案内パンフレットの表紙を飾った。
 それから月日は流れたけれど、栗山さんはずーっと怪獣シリーズを作り続けていて、忙しい仕事の合間を見つけては、個展も開いてきた。昨年5月には陶芸教室の会員さんが神戸でオープンした画廊の柿落とし個展をし、同12月には地元御殿山中学の多目的教室で作品展を開き、また1997年の第14回ハンズ大賞にも入選した。
 そして今年の8月2〜18日、「アピア工藝居房」のオープンギャラリーで「どうぶつ展」を開催。並んでいるのは、海外の絵本やウルトラマンに時々出てくるような、表情のユニークな怪獣たち。からだがプゥ〜と膨れたもの、キョロッとした目にまつげが付いた表情のおもしろいもの、おなかから虫が出ている野菜をイメージした怪獣など、思わず微笑んでしまう温かみのある生き物ばかり。
「怪獣シリーズは、作ってて飽きないんですよね。横で子どもに『僕の方がうまい』なんて言われてますが(笑)」
 日展会友で「アピア工藝居房」顧問の高坂嘉津幸さんは「1つのテーマを10年間も変わらず続けているのは、すばらしいこと。作りたいから作っている、栗山さんの子どものような感性は、「アピア工藝居房」がコンセプトとしている『大人の砂場』そのもので、実にうらやましい」と話す。
 夏休み中の8月5日と8日は、高坂さん、栗山さんらが指導にあたった親子陶芸体験講座が、地元の一小校区コミュニティーと一緒になり企画された。普段は大人が集う教室に、子どもたちの姿と、それ以上に夢中になる親の姿が。泥んこ遊びなどしなくなり、五感を使うことが少なくなった現代の子どもたちには、土をこねての陶芸が新鮮で大好評。ぜひ春休みにも…と希望する声が多い。

 

単なる陶芸教室を越えて人生を語り合い、 時にはパーティーも

 「アピア工藝居房」がユニークなのは、個性を尊重した指導というだけでなく、人間関係がおもしろいこと。入口の大きなテーブルでコーヒーやお酒を飲みながら合評しあい、時には自分たちで作ったそばちょこを使って手打ちそばパーティーをしたり、手作りの土鍋でタイ料理パーティーしたり。
「土をこねる人は、そば打ちもうまかった(笑)。曜日対抗ボーリング大会なんかもあって、縦と横のつながりも豊かですよ」と高坂さん。
 陶芸を媒介として、いろんな年代の人が語り合う場がここにはある。「居房」のネーミング通り、単なる講座を越えたゆとりある人間関係をサポートするように、ボトルキープなどができる会員用の食器棚も設けられていた。子どものころは誰もが持っていた感性を、もう一度表現できる「大人の砂場」的な陶芸教室。プラス、いろんな人生を語り合う場でもある「アピア工藝居房」の楽しさは、教室にやってくる会員さんのにこやかな表情に表れている。