10年前に陶芸教室に入会した栗山さん。会員の作品展に、「悪魔(怪獣)くんシリーズ」を出品。「他の人は食器などを作っていたのですが、何でも自由に好きなものを作ったらいいと先生に言われたので…」と、大胆に楽しんで作ったユニークなキャラクターは評判になり、「悪魔くん」が教室案内パンフレットの表紙を飾った。
それから月日は流れたけれど、栗山さんはずーっと怪獣シリーズを作り続けていて、忙しい仕事の合間を見つけては、個展も開いてきた。昨年5月には陶芸教室の会員さんが神戸でオープンした画廊の柿落とし個展をし、同12月には地元御殿山中学の多目的教室で作品展を開き、また1997年の第14回ハンズ大賞にも入選した。
そして今年の8月2〜18日、「アピア工藝居房」のオープンギャラリーで「どうぶつ展」を開催。並んでいるのは、海外の絵本やウルトラマンに時々出てくるような、表情のユニークな怪獣たち。からだがプゥ〜と膨れたもの、キョロッとした目にまつげが付いた表情のおもしろいもの、おなかから虫が出ている野菜をイメージした怪獣など、思わず微笑んでしまう温かみのある生き物ばかり。
「怪獣シリーズは、作ってて飽きないんですよね。横で子どもに『僕の方がうまい』なんて言われてますが(笑)」
日展会友で「アピア工藝居房」顧問の高坂嘉津幸さんは「1つのテーマを10年間も変わらず続けているのは、すばらしいこと。作りたいから作っている、栗山さんの子どものような感性は、「アピア工藝居房」がコンセプトとしている『大人の砂場』そのもので、実にうらやましい」と話す。
夏休み中の8月5日と8日は、高坂さん、栗山さんらが指導にあたった親子陶芸体験講座が、地元の一小校区コミュニティーと一緒になり企画された。普段は大人が集う教室に、子どもたちの姿と、それ以上に夢中になる親の姿が。泥んこ遊びなどしなくなり、五感を使うことが少なくなった現代の子どもたちには、土をこねての陶芸が新鮮で大好評。ぜひ春休みにも…と希望する声が多い。
単なる陶芸教室を越えて人生を語り合い、 時にはパーティーも
「アピア工藝居房」がユニークなのは、個性を尊重した指導というだけでなく、人間関係がおもしろいこと。入口の大きなテーブルでコーヒーやお酒を飲みながら合評しあい、時には自分たちで作ったそばちょこを使って手打ちそばパーティーをしたり、手作りの土鍋でタイ料理パーティーしたり。
「土をこねる人は、そば打ちもうまかった(笑)。曜日対抗ボーリング大会なんかもあって、縦と横のつながりも豊かですよ」と高坂さん。
陶芸を媒介として、いろんな年代の人が語り合う場がここにはある。「居房」のネーミング通り、単なる講座を越えたゆとりある人間関係をサポートするように、ボトルキープなどができる会員用の食器棚も設けられていた。子どものころは誰もが持っていた感性を、もう一度表現できる「大人の砂場」的な陶芸教室。プラス、いろんな人生を語り合う場でもある「アピア工藝居房」の楽しさは、教室にやってくる会員さんのにこやかな表情に表れている。
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